年次有給休暇の時季指定に関する実務上の注意点
4月より年10日以上の年次有給休暇(以下、年休)が付与される従業員に対し、年休日数のうち少なくとも5日を取得させることが義務となりました。確実な取得に向けて、使用者が取得時季を指定して運用するケースもあることから、今回は、この使用者による時季指定に関する実務上の注意点をとり上げます。
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就業規則の記載
今回の法改正では、従業員自らが5日の年休を取得すれば、使用者が改めて時季指定を行う必要はありません。しかし、取得日数が5日に満たない場合には、最終的には使用者が時季指定を行うことにより、確実に5日の年休を取得させる必要があります。
そもそも使用者による時季指定とは、使用者が従業員の希望を確認した上で、年休取得日をあらかじめ決めることをいいますが、これを行う際には、就業規則に時季指定を行う旨の規定が必要とされています。必ず記載しなければならない項目は、時季指定の対象となる労働者の範囲、時季指定の方法等です。
指定日までに退職した場合の対応
時季指定をしたものの、その指定日までに従業員が退職するというケースが考えられます。このような場合には、従業員の希望を再度確認した上で、退職日までに5日の年休を取得させることが原則的な取扱いになります。現実的には退職日までの期間が短いケースもありますが、このような場合も同様の取扱いとなります。
なお、実際に突然の退職により5日の年休を取得させることができなかったときは、労働基準監督署から個別の事情を踏まえた上で、使用者に対して助言等が行われることになっています。
望ましくないとされる取扱い
この年休取得義務化の取扱いに関し、厚生労働省のリーフレット「年次有給休暇の時季指定を正しく取扱いましょう」では、以下のような取扱いは望ましくないとされています。
②会社が独自に設けている有給の特別休暇を労働⽇に変更し、その労働⽇について、使用者が年休として時季指定すること。
①は、実質的に年休の取得につながってい ないことから、望ましくないとされています。
②は、今回の法改正をきっかけに特別休暇を廃止し、年休に振り替えることは、法改正の趣旨に沿わないとされています。特別休暇などの労働条件の変更は、従業員と会社が合意して行うことが原則になります。
年休の取得単位としては1日、半日、時間単位がありますが、この時季指定を行う際、従業員から半日単位の年休取得の希望があった場合には、半日単位での取得は差し支えないとされています。他方、時間単位は時季指定の対象とはならず、また従業員自らが取得しても5日の年休のカウントにも入れることはできないことから、誤った取扱いをしないようにしましょう。