相続対策の賃貸住宅、子が相続したくないと言う…

相続対策のために建築した賃貸住宅でも、肝心の推定相続人が「相続したくない」と主張する場合があります。気持ちよく相続してもらうためには、安定的に収益が期待できる環境を整えることも大切。その一つの方法として、民事信託もあります。事例で考えてみましょう。

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「なぜ相続をしたくないのか」を考えて行動を

築 25 年の賃貸住宅を所有する⼄さん、

⾃分が亡くなった後は、息⼦の丙さんに

この賃貸住宅を相続してもらいたいと希望しています。  しかし、肝⼼の息⼦・丙さんがそれを拒んでいます。

どうしたらよいのでしょうか。

丙さんのように、お子様等の推定相続人が相続したくないとの理由で、相続対策のために建築   した賃貸住宅を相続発生前に売却するケースが増えています。これを 100%防ぐことができる対策はありません。しかし、推定相続人が相続したくないと考える理由を理解し、環境を整えるこ   とができれば、その考えを変えることができるかもしれません。

相続したくなる環境づくりのポイント

では、丙さんの気持ちを動かすには、どのような環境を整えることが有効でしょうか。次にそ   の一例をご紹介します。

  • 賃貸住宅を相続するお⼦様が、他の推定相続⼈に代償⾦を⽀払う事態に陥ることを回避する(現物分割可能な財産を形成し遺⾔を作成する)
  • 賃貸住宅に係る借⼊⾦を完済⼜はいつでも完済可能な状態にする。
  • 必要な修繕・リフォームや設備の設置を適宜⾏い、⼤規模修繕は相続発⽣前に前倒しで⾏う。
  • 賃貸住宅の管理は外部委託する。

通常、賃貸住宅経営は、徐々に収入が減少し、支出は徐々に増加していきます。事例でも、父・乙さんは物件が新しく収益性の高い時期に所有していますが、息子・丙さんは老朽化が進み収益性が悪化した時期に所有することになります。

 

その点を考慮すると、恵まれた時期に賃貸住宅を所有している父・乙さんが、息子・丙さんのために、あまり手間がかからず安定的に収益が期待できる環境を整える必要があります。そしてその環境を整えることができれば、息子・丙さんが「賃貸住宅を相続したい(してもよい)」と考える確率は高くなるでしょう。

困難なら、「民事信託」 も活用できます

しかし、お子様が賃貸住宅を相続したいと考える環境を整えることは容易ではありません。整えることが困難であれば、民事信託※等を活用するという手段もあります。

ここでいう「民事信託」は、委託者(親)、受託者(子)、受益者(親)を想定しています。

なお、委託者(所有者)と受益者が同じですので、課税は生じません。

 

所有権が移転する前に民事信託等を活用することで、賃貸住宅の経営をお子様に委託し、お子様自身で相続を容認できる環境を整えてもらうことができます。

また、民事信託は近年、認知症で賃貸住宅の経営判断ができなくなった時の備えとしても注目を集めており、事前にお子様等の家族に財産管理を託す目的で活用が拡大しています。

 

まとめ

少子高齢化により人口が減少していく中では、不動産を所有し続けることは、なかなか容易ではありません。そのことを理解し、ここでご紹介した方法に限らず、賃貸住宅を相続してもらうために必要なことを考えて実践されれば、お子様はその気持ちに応えてくれるのではないでしょうか。

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