賃金改定を実施した企業の割合は90%超に
依然として人手不足の状態にある企業が多い状況が続いています。そのため、従業員の定着や採用のために、賃上げや初任給の増額などを行う企業も増えていると思われます。ここでは2019年11月に発表された調査結果※から、企業の賃金改定の実施状況や改定額などをみていきます。
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賃金改定実施割合は90%超に
上記調査結果から、企業の賃金改定状況の推移をまとめると表1のとおりです。
1人平均賃金を引き上げた・引き上げる企業(以下、引き上げた企業)の割合は高まり続け、2019年はついに90.2%に達しました。一方、1人平均賃金を引き下げた・引き下げる企業(以下、引き下げた企業)の割合は、2016年以降は1%未満が続いています。
なお、賃金改定を実施しない企業の割合は、2011年は18.4%でしたが、2019年には5.4%にまで低下しています。
1人平均賃金改定率は2%に
直近10年間の1人平均賃金の改定額と改定率をまとめると、下グラフのとおりです。
1人平均賃金の改定額は、2012年には4,000円を超え、2014年以降は5,000円台で推移しています。特に2017年以降は、5,500円を超える額で推移しています。改定率も2017年以降は2.0%になりました。
産業別の賃金改定状況
2019年の産業別の賃金改定状況をまとめると表2のとおりです。
回答企業のうち、建設業と電気・ガス・熱供給・水道業は1人平均賃金を引き上げた割合が100%となりました。一方で、宿泊業,飲食サービス業とサービス業(他に分類されないもの)は80%を下回りました。
産業別の改定額と改定率
1人平均賃金の改定額が決定している企業の改定額と改定率を、産業別に2年分をまとめると表3のとおりです。2019年の改定額は3,000~9,000円台まで、幅があります。学術研究,専門・技術サービス業が9,165円で最も高くなりました。建設業も8,000円を超えています。一方で医療,福祉が3,798円で最も低く、4,000円台の産業は5業種ありました。
2019年の改定率は、建設業と学術研究,専門・技術サービス業が2.4%で最も高くなりました。一方、金融業,保険業が1.4%で最も低くなりました。
2018年からの増減では、7産業が増加、6産業が減少しています。
業種によって賃金改定の状況はさまざまです。全体的には2019年に改定額は減少、改定率は3年連続で増減なしで、増加傾向が落ち着いてきているともいえそうです。2020年はどうなるでしょうか。
(※)厚生労働省「令和元年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」 日本標準産業分類の15大産業に属する会社組織の民営企業で、製造業及び卸売業、小売業については常用労働者30人以上、その他の産業については常用労働者100人以上を雇用する企業を調査対象とし、そのうち産業、企業規模別に抽出した約3,500社を調査客体として2019年8月に行われた調査です。ここで紹介したデータは、常用労働者100人以上の企業(調査客体企業数は3,224社、有効回答企業数は1,647社)について集計したものです。数値は四捨五入の関係で100にならないことがあ ります。詳細は次のURLのページから確認いただけます。https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/19/index.html